日本では、少子高齢化による労働人口の現象が深刻さを増し、多くの企業が人材確保に苦慮しています。
「特定技能」は、企業の人材確保策を後押しするための国による支援で、外国人材の積極的な採用を促進するために創設された制度です。
「特定技能定期報告」は、特定技能の在留資格を持つ外国人を雇用する企業に提出が義務付けられている書類で、特定技能制度を活用する上で重要な書類です。
本記事では、特定技能定期報告の概要や書類作成のポイントを解説します。特定技能定期報告は、登録支援機関に支援を委託しているケースや自社で支援を行っているケースで報告内容が異なるなど、注意点が多数あるので、重要な点をまとめて解説します。
特定技能とは外国人に付与される在留資格のひとつで、国内での人材確保が困難で外国人の積極的な採用による人材確保が急務だと認められた、特定産業分野での外国人雇用を促進するための制度です。
特定技能で就労が認められている特定産業分野は以下の16分野です。
特定技能制度では、特定技能外国人を雇い入れる企業(受入れ企業又は個人事業主の方)である特定技能所属機関に対して、特定技能外国人への生活等に関する支援の実施と、入管局への実施内容等についての定期的な報告を義務付けています。この定期的な報告は届出書を提出することで行います。
定期届出は、特定技能外国人の受入れや支援、実施状況に関して、四半期(3ヶ月)に一回の提出が必要です。随時届出は、特定技能外国人に関して入管庁が規定する報告事項が発生した場合に都度、提出します。
参考・出典:公益財団法人 国際人材協力機構「在留資格「特定技能」とは」
参考・出典:法務省「特定技能外国人を雇用・支援するときは、「届出」が義務付けられています。」
先述したとおり、特定技能所属機関は、特定技能外国人の支援を実施しなければなりません。
しかし、当該支援業務は、登録支援機関に支援計画の全部もしくは一部の委託が可能です。こうした場合に、定期報告で届出が必要な書類は以下のとおりです。
法人番号や特定産業分野、氏名、住所など特定技能所属機関に関する内容を記載し、受け入れ状況に関すること、報酬の支払い状況を明らかにします。
特定技能外国人が法令や規定に従い、適切な活動が実施されているのかを、報酬の支払状況とあわせて報告します。
具体的な報告項目は以下です。
なお、報酬は、日本人従業員と比較し、同じ職場かつ同じ業務に従事する以上、外国人と日本人で報酬に格差が生じないよう規定に基づいて決定します。
届出対象の特定技能外国人全員分の、届出対象期間に対応した賃金台帳の写しを提出します。
報酬の支払を通貨払いにしている場合のみ、対象の特定技能外国人全員分の証明書の提出が必要です。
参考・出典:出入国在留管理庁「特定技能制度 定期届出書の記載方法と留意点」
特定技能外国人の受け入れ支援の実行の全てを登録支援機関に委託せず、一部でも自社で実施している場合は、実施予定の支援項目に関して、以下の書類も先述の書類と併せて提出することで、支援の実施状況を報告する必要があります。
法人番号や特定産業分野、氏名、住所など特定技能所属機関に関する内容を記載し、受け入れていた1号特定技能外国人に関する支援の実施可否を明らかにします。
受け入れていた1号特定技能外国人支援対象者の氏名、性別、国籍や在留カード番号などを記載し、支援実施状況を報告します。
相談や苦情対応が発生した場合に提出が必要です。全ての相談や苦情案件に対して対応結果欄まで記載します。
必ず行わなければならない支援の内容に、特定技能外国人および監督者(特定技能の代表者や直接の上司等)それぞれに対して3ヶ月ごとに対面で行う定期的な面談が含まれます。
その定期的な面談の結果について、報告書の提出が必要です。やむを得ない理由により面談を実施できなかった場合は、代わりに後述の「支援未実施に係る理由書」を提出します。
自発的ではない離職時に転職支援した場合のみ提出が必要です。
「1号特定技能外国人支援計画書」で実施予定だった支援が実施されなかった場合、理由を記載して提出します。
参考・出典:出入国在留管理庁「特定技能制度 定期届出書の記載方法と留意点」
特定技能定期報告は「出入国管理及び難民認定法第10条の18第2項第2号」にて四半期に一回、当該四半期の翌四半期の初日から14日以内の提出が義務付けられており、提出期間が以下のとおりに規定されています。
参考・出典:出入国在留管理庁「特定技能所属機関による支援実施状況に係る届出」
特定技能の定期報告として届出が必要な書類は、入管局へ提出します。書類の提出方法には以下3つの方法があります。
特定技能定期報告の届出書は、インターネットで提出が可能です。出入国在留管理庁電子届出ポータルサイトから提出しますが、事前登録が必要なため注意が必要です。
作成した書類を入管局に持参して提出も可能です。提出先は、特定技能所属機関の住所を管轄する地方入管局および支局です。
なお、法人の場合は登記上の本店所在地を管轄する入管局が提出先となるため注意が必要です。
届出書類は郵送での提出も可能です。提出先は窓口に持参する際と同様です。
特定技能の定期報告で届出が必要な書類は複数あり、全てを規定に従った適切な方法で作成し、規定期間内の提出が必須です。よって、届出が必要な書類の種類や作成および提出のルールを理解し、不備のない対応が必要です。
特に「受入れ・活動状況に係る届出書」は、必ず特定技能所属機関の役職員が作成し署名をしなければならないため注意が必要です。
また、在留期間が短いケースでも報告が必要なため省略せず届出しましょう。
特定技能定期報告は、出入国管理及び難民認定法により提出が義務付けられているため、規定期間内の届出がなかったり、虚偽の内容で届け出たりした場合は罰則の対象とみなされる可能性があります。
具体的には、特定技能の雇用契約に関する届出や特定技能外国人の活動状況の報告などに虚偽や違反が認められると、30万円以下の罰金が課されます。
また、法令違反行為とみなされる場合には特定技能外国人の受け入れ停止を科される可能性もあります。
参考・出典:法務省「出入国在留管理庁からのお知らせ~実地調査に御協力ください~」
外国人雇用は、少子高齢化が進み深刻な労働力不足が課題となっている現状を背景に注目されています。
介護や建設業など特に人手不足が深刻な状況である特定産業分野での外国人材の活用を促進するために、新たに在留資格として「特定技能」が創設されています。
特定技能外国人を雇い入れる際は、当該外国人の方が日本の職場で安定した就労機会を得て、定着するための支援計画の立案と実行が受け入れ企業に義務付けられています。
さらに、計画された支援策が実行されているかを確認するために活動状況や支援の実行状況を入管局に定期報告する義務も課されています。
特定技能外国人に関する定期報告は、入管法で定められた法的義務があるため四半期に一回、入管局に届出が必要で、適切な届出がされない場合には罰則の対象となるため注意が必要です。
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