2019年に、新しい在留資格である「特定技能」が創設されました。日本国内の深刻な人手不足に対応するために、一定の専門性と技能を持ち、現場の即戦力となる外国人を受け入れるための制度です。
人材不足と技術継承が課題の「建設業界」でも、外国人材の受け入れと共生は重要な取り組みです。
本記事では、特定技能「建設」の基礎知識や、特定技能外国人を雇用する方法などをわかりやすく解説します。建築分野で特定技能外国人を雇用したいと考えている採用担当者様は、ぜひ参考にしてください。
2019年4月、新しい在留資格「特定技能」(特定技能1号・特定技能2号)が創設されました。この制度により、人手不足が深刻な業種で、一定の専門性・技能を持つ外国人(特定技能外国人)の受け入れが可能になりました。
特定技能「建設」とは、特定技能の12分野のうちのひとつで、年々人手不足が深刻化する建設業界で現場の即戦力となる外国人材を受け入れる制度です。
国土交通省によれば、建設業就業者数は、1997年(685万人)をピークに減少しており、全国的に深刻な労働力不足に陥っています。技術者の高齢化、高齢化した技術者の離職により、今後さらに人手不足は加速するでしょう。
建設業界で人手不足や高齢化が進む理由として、以下の3つも挙げられます。
建設業界の人手不足を解決するためには、労働環境やイメージの改善、政府の支援などが必要ですが、外国人材の受け入れも重要です。
在留資格「技能実習」は、技能を習得し母国へ技術を持ち帰るための制度であり、労働力確保につながりません。そこで新設された在留資格が、建設現場の即戦力となれる特定技能「建設」です。
国土交通省によれば、2023年10月時点で建設分野に就労する外国人材の数は144,981人で、全産業の約7.1%を占めています。
そのうち、特定技能外国人の人数は2019年の受け入れ開始から増加傾向にあり、2024年4月時点では26,790人です。
とはいえ、建設分野で9万人を超える技能実習生の数にはまだ届いておりません。
特定技能「建設」は、以下の3つ業務に区分されています。
上記3業務区分で、建設業としての許可を受けて行う29種類の工事に関わる専門作業を網羅しています。認定を受けた在留資格に含まれる工事なら、現場の種類を問わず従事することが可能です。
上記3業務区分の作業内容は特定技能1号と2号に共通する内容です。特定技能2号では、工事現場での指導や、工程を管理する能力も加わります。
以下で、各区分で従事できる作業範囲を詳しく解説します。
土木で従事できるのは、指導者の監督の元、土木施設の新設、改築、維持、修繕など主に土木施設に関わる作業です。
出典:国土交通省「建設分野における外国人の受け入れ」
建築で従事できるのは、指導者の監督の元、建築物の新築、増築、改築、または移転、修繕、または模様替えなど主に建築物に関わる作業です。
出典:国土交通省「建設分野における外国人の受け入れ」
ライフライン・設備で従事できるのは、指導者の監督の元、電気通信、ガス、水道、電気その他のライフライン・設備の整備・設置、変更または修理に関わる作業など主にライフライン・設備に関わる仕事です。
出典:国土交通省「建設分野における外国人の受け入れ」
次の章では建設分野の特定技能1号を取得する方法について解説します。
建設分野の特定技能1号を取得する方法は、「技能実習経験者」と「2号技能実習未経験者」で異なります。
技能実習2号を良好に修了または技能実習3号を修了している場合、技能実習の職種・作業内容と特定技能1号の業務内容に関連があれば試験免除で特定技能1号を取得できます。
2号技能実習を良好に修了する見込み、または3号技能実習を修了する見込みの外国人は、在留期間満了日の6ヶ月前より「建設特定技能受入計画」の認定申請が可能です。
技能実習経験がない外国人は、海外を基本に日本国内でも実施される以下の試験の両方に合格しなければなりません。
➀ 技能評価試験:「技能検定3級」または「建設分野特定技能1号評価試験」
➁日本語試験:「国際交流基金日本語基礎テスト」または「日本語能力試験(N4以上)」
特定技能2号には、1号よりも熟練の能力(特定技能1号としての実務経験で身に付けた能力)が求められます。
特定技能2号のレベルを満たすためには、国土交通省が定める一定期間(半年~3年)の班長または職長としての実務経験 に加えて、「建設分野特定技能2号評価試験」または「技能検定1級」(学科試験と実技試験)の合格が必要です。
既存の試験に加えて、各分野で新規に設けられる内容もありますが、日本語試験は不要です。
特定技能1号と特定技能2号は、求められる技能レベル以外にも、以下のさまざまな違いがあります。
特定技能1号 | 特定技能2号 | |
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在留期間 | 1年を超えない範囲内で法務大臣が個々に指定する期間ごとの更新、通算で上限5年まで | 3年、1年または6ヶ月ごとの更新(在留期間の更新に上限はない) |
技能水準 | 試験等で確認(技能実習2号を修了した外国人は試験等免除) | 試験等で確認 |
日本語能力水準 | 生活や業務に必要な日本語能力を試験等で確認(技能実習2号を修了した外国人は試験等免除) | 試験等での確認は不要 |
家族の帯同 | 基本的に認めない | 要件を満たせば可能(扶養する配偶者、子) |
受け入れ機関または登録支援機関による支援 | 支援の対象 | 支援の対象外 |
在留資格「特定技能」の外国人を雇う企業を特定技能所属機関(受け入れ機関)と呼びます。
特定技能「建設」で外国人を雇用するための受け入れ機関の主な要件は以下のとおりです。
順に解説します。
外国人を雇用する際には、地方整備局等または各都道府県で、建設業3条許可証の取得が必要です。また、5年ごとに更新が必要です。
特定技能「建設」で外国人を雇用する場合は、受け入れ人数の上限を守る必要があります。
具体的には、1号特定技能外国人の総数が常勤の職員(1号特定技能外国人及び技能実習生を含まない。)の総数を超えないようにする必要があります。
特定技能「建設」で外国人を雇用するためには、一般社団法人 建設技能人材機構(JAC)への加入と会員証明書の入手が必要です。JACとは、特定技能外国人の受け入れに関する専門工事業団体および元請建設業者団体により、建設業の健全な発展を目的に2019年4月1日に設立された組織です。
「JACの正会員である建設業者団体の会員」または「JACの賛助会員」のどちらを選んでも良いですが、会員になるための費用が異なる点に注意してください。
JACの正会員である建設業者団体の会員は、JACの年会費は不要です。ただし、所属する建設業者団体の会費などのルールに従う必要があります。
賛助会員は、履歴事項全部証明書、印鑑証明書などの書類の提出のほか、年会費24万円、JACの理事会の承認が必要です。
また、どちらの会員も、1号特定技能外国人を受け入れた際には受入負担金を支払う必要があります。
特定技能「建設」で外国人を雇用する予定がある建設企業(受け入れ企業)は、一般財団法人建設業振興基金が運営する「建設キャリアアップシステム(CCUS)」の事業者登録が必要です。認定登録機関窓口、またはオンライン申請できます。
事業者登録だけでなく、内定者(外国人)の技能者登録も必要な点に注意してください。
建設キャリアアップシステム(CCUS)は、事業者・技能者両方にメリットがあります。
事業者のメリット | 技能者の就業の状況を簡単に把握できる 入退室管理にICカードを使うことで、技能者の入退室管理が容易になる |
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技能者のメリット | 自身が持つ資格や職務履歴を証明できるため、適正な評価が受けられる |
「雇用契約に係る重要事項事前説明書」を用意し、雇用予定の外国人に対し、業務内容や報酬予定金額などを事前に説明します。(対面だけでなく、テレビ電話でも可能)
外国人がしっかり理解できる言語で行うことが条件です。「雇用契約に係る重要事項事前説明書」は国土交通省のHPから入手できます。
国土交通省による、建設特定技能受入計画の審査・認定を受けます。
建設特定技能受入計画とは、同等の技能を有する日本人と同等額以上の報酬であることの説明書、建設キャリアアップシステムの事業者IDを確認する書類など、認定基準に基づいて作成する計画書です。
国土交通省の「外国人就労管理システム」からオンライン申請します。申請から認定まで3~4ヶ月かかる場合もあるため、余裕を持った申請がおすすめです。
外国人が新規入国する場合は「在留資格認定証明書交付申請」を行います。
窓口またはオンラインから、地方出入国在留管理局に申請します。審査期間は、通常2ヶ月程度です。
在留資格認定証明書を受領したら、対象者へ郵送します。その後、現地の日本大使館でビザの発給手続きを行い、ビザが下りて初めて日本へ渡航できます。
日本の空港での入国審査を経て、在留カードが交付されます。
四半期ごとに、出入国在留管理局に、特定技能外国人への支援状況の報告を行います。提出する書類は以下の3つです。
出入国在留管理庁電子届出システムを使っての届出も可能です。
建設分野の特定技能人材を雇用する際には、主に2つの費用を負担する必要があります。
順に解説します。
年会費
JACの賛助会員 | 24万円 |
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JACの正会員である建設業者団体に所属する場合 | 建設業者団体が定める会費を負担する |
受入負担金
対象となる特定技能外国人の例 | 1人あたり受入負担金の月額 |
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海外試験合格者(本機構が指定する海外教育訓練を受ける場合) | 20,000円(参考:年額24万円) |
海外試験合格者(本機構が指定する海外教育訓練を受けない場合) | 15,000円(参考:年額18万円) |
国内試験合格者 | 13,750円(参考:年額16万5千円) |
試験免除者(技能実習2号修了者等) | 12,500円(参考:年額15万円) |
※ここでいう試験とは「建設分野特定技能1号評価試験」をさします
技能者登録料
建設キャリアアップカードの発行にかかる料金で、カード有効期限は発行日から9年経過後の最初の誕生日です。申請時60歳以上の外国人の有効期限は、同14年目の誕生日までで、本人確認書類未提出の場合は、同2年目の誕生日までが有効期限です。
申請方法 | 登録料(税込) |
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インターネット | (1)簡略型:2,500円 |
(2)詳細型:4,900円 | |
認定登録機関 | 詳細型:4,900円 |
事業者登録料
事業者がシステムを利用する登録料で、登録の有効期限は5年です。登録料は事業者の資本金額により決まります。たとえば、資本金1,000万円以上2,000万円未満の場合、登録料は24,000円です。
管理者ID利用料
事業者が、事業者情報を管理するのに必要なIDにかかる料金です。毎年支払う必要があります。
1IDあたり | 11,400円(税込) |
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一人親方の管理者ID利用料は、2,400円です。現場管理者として登録したIDには管理者ID利用料はかかりません。
建設業界は深刻な人手不足に陥っており、国内で人材が集まらない場合は、外国人材を雇用する企業が増加しています。
特定技能「建設」で外国人の受け入れを行えば、一定の能力・スキルを備えた外国人の採用が可能です。
とはいえ、特定技能「建設」の受け入れには複雑な手続きやルールがあり、何からはじめたら良いのかわからない採用担当者様も多いのではないでしょうか?
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