素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業は、特定技能の対象分野のなかでも受け入れ人数が二番目に多く、ニーズの高い分野です。
政府は、専門的な知識があり即戦力として期待できる特定技能外国人の受け入れに積極的な姿勢を見せています。
特定技能の製造業分野では、具体的にどのような業務に外国人を従事させられるのでしょうか。
本記事では特定技能制度の概要をはじめ、素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野を解説します。
出入国在留管理庁の公表するデータによると、特定技能外国人の受け入れ総数は令和6年5月末時点で約24万6千人です。
うち、素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野は43,005人で、最多の飲食料品製造業分野に次ぐ多さです。
政府は、2024年度からの5年間で特定技能外国人の受け入れ上限を82万人に設定する方針を発表しました。
対象分野の追加も決まり、人材確保および流出の防止に向け国も特定技能外国人の受け入れに積極的であると伺えます。
出典:出入国在留管理庁「外国人材の受入れ及び共生社会実現に向けた取組」
日本で就労するためには、就労許可のある在留資格が必要です。特定技能は在留資格の一種で、人手不足が特に困難な状況にある特定産業分野で、人材確保と流出防止を図るために国が創設した制度です。
特定技能の在留資格は、一定水準以上の知識やスキルがなければ取得できません。特定技能外国人の受け入れは、即戦力を求める事業者にとって大きなメリットです。
特定技能外国人の受け入れが可能な分野は以下のとおりです。
特定技能の在留資格は、1号と2号に分類されます。
特定技能1号は、技能および日本語の検定に合格し取得できます。同分野の技能実習を良好に修了し取得する方法も存在します。
1号の在留期間は通算で5年までです。家族の帯同は許可されていません。
また、特定技能1号の受け入れ機関は、適切な支援計画を作成し、計画に基づいたサポートを行わなければならないとされています。
特定技能2号は、1号より高い技術力が必要な検定や実務経験により取得できます。2号は在留期間が無期限となり、要件を満たせば配偶者・子の帯同が許可されます。1号と異なり、2号は受け入れ機関による支援の対象外です。
新しく追加された4分野では、1号のみ受け入れ可能とされています。ただし、元々1号のみだった他分野で2号取得が可能になった例もあるため、政府から発信される最新の情報に注意しておきましょう。
なお、介護分野は移行先として「介護」の在留資格が個別に設定されています。
特定技能の「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業」の分野は、元はそれぞれ個別の3分野に分かれていましたが、令和5年にひとつの分野に統合されました。
日本標準産業分類上で定められた分類に該当する事業者でなければ特定技能外国人の受け入れはできません。
従事できる業務は以下の3種類に区分されます。
いずれの業務でも、原材料の調達や搬送・クレーンやフォークリフト運転などの関連業務も想定されています。ただし、関連業務を主たる業務として任せてはならないため注意しましょう。
業務をそれぞれ詳しく解説していきます。
機械金属加工区分では、素形材製品や産業機械を製造する工程の作業に従事します。
主な業務は以下のとおりです。
電気電子機器組み立て区分では、電気電子機器を製造・組み立てする工程の作業に従事します。
主な業務は以下のとおりです。
金属表面処理区分では、表面処理などの作業に従事します。
主な業務は以下のとおりです。
製造業分野で特定技能外国人を受け入れる場合のメリットを解説します。
特定技能外国人は、一定水準以上の知識やスキルを採用前に把握できる点が特徴です。日本語能力が高い外国人も多く、教育効率も高まります。特定技能外国人は、即戦力を要する事業者と相性の良い人材です。
技能実習制度では、技能実習生の受け入れ人数に制限があり、所定の人数までしか雇用できません。また、従事できる業務の内容や就労時間も限定的です。
製造業分野の特定技能外国人の場合、受け入れ制限はないため、必要なだけ人材を効率よく確保でき、技能実習と比較して幅広い業務に従事させられます。人手不足が深刻な農業分野では大きなメリットです。
特定技能1号の在留期間は通算5年です。
また、2号は在留期間が無期限化します。人材の定着は受け入れ側にもメリットです。結果として、採用コストの削減効果も見込めます。
特定技能は、すでに日本に在留している外国人も取得もできるため、取得が見込まれる人材がいれば移行を促してみるのも良いでしょう。
特定技能外国人の受け入れ機関が注意すべき2点のポイントを解説します。
特定技能外国人の受け入れ機関が満たすべき基準は以下のとおりです。
また、製造業分野で特定技能外国人を受け入れるには、直近1年間で「製造品出荷額等」が発生していなければなりません。
「製造品出荷額等」とは、直近1年の製造品出荷額・加工賃収入額の合計です。当該事業所が所有する原材料によって製造された製品を直近1年の間に出荷していなければ要件を満たさないため注意してください。
同一企業の他事業所へ引き渡した分や、自家使用した分、委託販売(返品を除く)に出した分も含んで良いとされています。
さらに、特定技能外国人の受け入れ機関は、各分野の協議会へ入会しなければならないとされています。製造業分野では「製造業特定技能外国人材受入れ協議・連絡会」です。
会員は、必要に応じて会の活動に対する協力を行います。会費の徴収は当面の間は無しとされていますが、今後の情報に注意してください。
特定技能外国人の受け入れ機関には一般的に以下の義務が課されます。
特定技能の資格を取得するための方法を解説します。
分野ごとに定められた特定技能評価試験と日本語能力検定の両方に合格すると、特定技能1号の在留資格を取得できます。
技能評価試験では、一定の基準以上の点数の獲得が必要です。日本および一部の海外で受験でき、受験できる国や試験の内容は各分野で異なります。試験内容は知識や判断力を問う学科試験のほか、実技試験が含まれる分野も存在します。
製造業分野の技能試験は、機械金属加工・電気電子機器組立て・金属表面処理の3区分に分かれています。
2号の場合、実務経験3年(技能実習経験含む)の他、技能評価試験のほか、ビジネスキャリア検定3級で下記いずれかの区分の合格も必要です。
日本語能力は「国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)」でA2レベル、または「日本語能力試験(JLPT)」でN4レベル以上の合格が必要です。いずれも簡単な日常会話ができるレベルが求められます。
技能実習2号を良好に修了した外国人は特定技能1号の在留資格を取得できます。前項で解説した技能や日本語の検定受験は必要ありません。
技能実習とは、外国人が日本で得た知識や技術を自国に持ち帰って活用するための制度です。開発途上地域への技術移転による国際貢献を目的に創設されました。
現行の技能実習制度は転職が規制されていることから外国人労働者の立場が弱くなりやすく、政府は「育成就労制度」の新設を予定しています。新制度では転職制限が緩和され、特定技能への移行もしやすくなる見通しです。
特定技能の在留資格は、外国人本人が以下の基準を満たしていなければ取得できません。
技能実習を修了済または検定に合格済の場合でも、要件を満たさない場合は特定技能の資格を取得できません。
出典:出入国在留管理庁「特定技能外国人受け入れる際のポイント」
特定技能は在留資格の一種で、資格を取得するには所定の検定に合格する方法と、同分野の技能実習2号を良好に修了する方法が存在します。
産業分野の素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業は、元は個別の分野であったが1分野として統合されました。
従事できる業務は「機械金属加工」「電気電子機器組立て区分」「金属表面処理区分」に分類されます。
Adeccoでは特定技能外国人材紹介サービスを行っているのでぜひご活用ください。