少子高齢化により日本人労働者の数が減少している中、国籍を問わずに優秀な人材を確保するために、外国人材を雇用する企業が増えています。
外国人雇用は、法令を守って適正に行う必要があります。法令を破ると罰則の対象になるため、注意が必要です。
本記事では、外国人の雇用時・雇用後に必要な確認事項・手続き内容を解説します。外国人の雇用を検討中で、必要な手続きがわからない企業の担当者様はぜひ参考にしてください。
日本での就労が認められていない外国人を雇うと、企業は不法就労助長罪の処罰の対象となります。そのため、外国人雇用時に以下の2点を必ず確認しましょう。
外国人の雇用時には、まず在留カードで就労が可能な在留資格なのか確認しましょう。
在留カードとは、日本に中長期滞在(3ヶ月を超えて日本に在留)する外国人にとって、身分証明書のような役割を果たすもので、常時携帯が義務付けられています。
在留カードには、氏名や生年月日、性別、国籍・地域、住居地、在留資格、在留期間、就労の可否など重要事項のほか、16歳以上の場合は顔写真も表示されています。
在留カードを持っていれば即就労可能なわけではなく、技術・人文知識・国際業務(技人国)や特定技能、高度専門職など、就労可能な在留資格でなければなりません。
また、在留カードには有効期限があります。有効期限が切れている場合は雇用できません。
就労可能な在留資格は、以下のとおりです。雇用を予定している業務はどの在留資格が適しているのか確認しておきましょう。在留資格の範囲から外れる業務に従事させることはできません。
就労が認められる在留資格(活動制限あり/各在留資格に定められた内容の範囲内で報酬を得る活動が可能)
在留資格 | 該当例 |
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外交 | 外国政府の大使、公使等およびその家族 |
公用 | 外国政府等の公務に従事する者およびその家族 |
教授 | 大学教授等 |
芸術 | 作曲家、画家、作家等 |
宗教 | 外国の宗教団体から派遣される宣教師等 |
報道 | 外国の報道機関の記者、カメラマン等 |
高度専門職 | ポイント制による高度人材企業等の経営者、管理者等 |
経営・管理 | 企業等の経営者、管理者等弁護士、公認会計士等 |
法律・会計業務 | 弁護士、公認会計士等 |
医療 | 医師、歯科医師、看護師等政府関係機関や企業等の研究者等 |
研究 | 政府関係機関や企業等の研究者等 |
教育 | 高等学校、中学校等の語学教師等 |
技術・人文知識・国際業務 | 機械工学等の技術者等、通訳、デザイナー、語学講師等 |
企業内転筋 | 外国の事務所からの転勤者介護福祉士 |
介護(※1) | 介護福祉士 |
興行 | 俳優、歌手、プロスポーツ選手等 |
技能 | 外国料理の調理師、スポーツ指導者等技能、実習生 |
特定技能 | 特定産業分野に熟練した技能を要する業務に就く外国人 |
技能実習 | 技能実習生 |
身分・地位に基づく在留資格(活動制限なし)
在留資格 | 該当例 |
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永住者 | 永住許可を受けた者 |
日本人の配偶者等 | 日本人の配偶者・実子・特別養子 |
永住者の配偶者等 | 永住者、特別永住者の配偶者、我が国で出生し引き続き在留している実子 |
定住者 | 日系3世、外国人配偶者の連れ後等 |
就労の可否は指定される活動によるもの
在留資格 | 該当例 |
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特定活動 | 日本の大学を卒業した人が幅広い業務に従事する活動(特定活動46号)、インターンシップ、ワーキングホリデー、留学生の継続就職活動、特定技能への移行準備等指定書の内容に準じた活動 |
就労が認められない在留資格(資格外活動許可を受けた場合は、一定の範囲内で就労が認められる)
在留資格 | 該当例 |
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文化活動 | 日本文化の研究者、国外の大学に通う、報酬を受けないインターンシップ参加者等 |
短期滞在 | 観光客、会議・商談参加者(日本で報酬が発生しない)、短期間の在日親族訪問者等 |
留学 | 大学、専門学校、日本語学校等の学生 |
研修 | 研修生(=雇用関係や報酬の発生がない非実務研修に限られる) |
家族滞在 | 活動系の在留資格(例:技術・人文知識・国際業務、留学等)で在留する外国人の配偶者、子 |
以下の2つのケースでは在留カードがなくても就労できる場合があるため、旅券等で就労できるか確認してください。
在留カード表面の「就労制限の有無」欄に「就労制限なし」と書かれていれば、就労内容に制限はありません。「就労制限なし」は、「永住者」「定住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」の身分系の在留資格の場合に記載されます。
また、以下の2つの場合は、就労できる業務に制限があります。
2の場合は、法務大臣が指定した活動内容を記載した「指示書」を確認してください。いずれの場合も風俗営業の従事は認められておりません。
「就労制限の有無」欄に「就労不可」と書かれていても、在留カード裏面の「資格外許可欄」に以下の①または②のいずれかの記載がある場合や、パスポートに資格外活動許可の証印(シール)があれば制限付きで就労が可能です。
認められた資格外活動の内容は、パスポートの証印に記載されているので、パスポートの証印も確認するようにしましょう。
資格外活動とは、現在の在留資格では認められていない収入や報酬を伴う活動です。出入国在留管理庁から「資格外活動許可」を得ることで、在留資格外の就労が可能になります。
許可(原則週28時間以内・風俗営業の従事を除く)
「留学」「研修」「家族滞在(在留外国人の被扶養者など)」「文化活動」「短期滞在(旅行者など)」は、就労不可の在留資格なので、資格外活動許可がなければ就労できません。
たとえば、在留資格「留学」の留学生は資格外活動許可を得てアルバイトをするケースが多いですが、原則週28時間以内でなければなりません。
許可(パスポートの資格外活動許可証印に記載された範囲内の活動)
原則1の包括許可を満たした上で、個別許可が記された資格外許可書を確認します。包括許可の範囲外の活動をする場合や、就労資格を持つ外国人が別の在留資格の仕事をする場合に必要です。
たとえば、留学生が就業体験を目的としたインターンシップに従事するために週28時間を超える資格外活動に従事するケースや、「教授」の在留資格を持つ外国人が民間企業で語学講師として働くケース(「技術・人文知識・国際業務」に該当する活動を行う)などが該当します。
また、そもそも就労制限がない「永住者」や「定住者」などの身分系在留資格の場合は、資格外活動許可を受ける必要はありません。
在留カードの記載事項を確認すると同時に、在留カードが本物かどうかも確認してください。在留カードが偽造されている可能性もあるからです。
以下で、在留カードが本物かどうかを確認する方法を紹介します。
在留カードには以下の4つの真偽判断の方法が施されているため、確認してください。
次に、「出入国在留管理庁 在留カード等番号失効情報照会」のページで、在留カードの番号が失効していないか確認しましょう。
在留カード等番号と在留カード等有効期間を入力し、ウェブサイト画面に表示されている文字を入力すると確認できます。
但し、入力した在留カード番号が現在本当に有効か否かしかわからないため、必ずしも「本物の所持人名義の在留カードである」ということが確認できるわけではありません。
雇用したい外国人の許可を得た上で、「在留カード等読取アプリケーション」で在留カードを読み取ると、在留カード内のICチップに記録された情報を確認できます。
カード表面の記載内容とICチップの内容に相違があったり、エラーが出たりする場合は、偽造が疑われます。
外国人の雇用時の手続きの流れを、具体的に解説します。以下の2つの場合で、手続き内容が異なる点に注意してください。
在留カードが本物で、就労可能と確認できたら、現在の在留資格を変更せずに雇用できるか確認しましょう。
たとえば、留学生を正社員として雇用する場合は、留学から「技術・人文知識・国際業務」等の就労系資格への在留資格変更の手続きが必要です。
在留資格変更手続きは、企業または外国人本人が出入局在留管理局に申請します。審査完了まで最短でも2週間~1ヶ月かかるため、余裕を持って早めに確認・申請をしましょう。
在留期限が3ヶ月以内に迫っている場合は、あわせて在留カードの更新手続きも行ってください。
既に就労可能な在留資格を持っている場合でも、転職に伴い「在留資格変更許可申請」(特定技能、高度専門職)が必要な場合もあります。
また、「技術・人文知識・国際業務」のように在留資格の変更申請をする必要がない場合でも、外国人の学歴・専攻や履修科目と、新たに従事する業務との関連性の確認は必要です。
「技術・人文知識・国際業務」で転職した場合、在留期間満了までに更新申請を行い、そこで転職の経緯や新たな業務と学歴の関係などを説明することになりますが、更新不許可となる可能性もあるため、異業種への転職で、在留期限まで6ヶ月以上ある場合は「就労資格証明書交付申請」を経ておいた方がよいこともあります。
海外在住の外国人を雇用する場合は、まず「在留資格取得手続き」を行います。具体的には、以下の順番で進めていきます。
上記1~5の手続きには、入管によっては3ヶ月から半年程度かかるため、雇用が決まったら早めに手続きを進めましょう。
また、外国人の日本入国は、原則として在留資格認定証明書交付日から3ヶ月以内に行う必要がある点に注意してください。
以下からは、日本在住の外国人も海外在住の外国人も、共通の手続き内容です。
雇用対策法第28条により、外国人の雇い入れ時・離職時には、ハローワーク(公共職業安定所)に「外国人雇用状況届出書」の届出が必要です。(「外国人雇用状況届出システム」から電子申請することも可能)
企業が、外国人材の氏名や在留資格、在留期間などを届け出ます。届出期限は雇入れの翌月末日までです。
正社員だけでなく、短期のアルバイトで雇う場合も届出が必要です。届出を怠ったり虚偽の報告をしたりした場合は、30万円以下の罰金の対象となる可能性があります。
ただし、外国人が雇用保険に加入する場合はこの手続きは必要ありません。雇用保険被保険者資格取得届が、外国人雇用状況の届出を兼ねることが理由です。
また、在留資格が「外交」「公用」と「特別永住者」(在日韓国・朝鮮人など)の場合は、外国人雇用状況の届出は不要です。
外国人材が雇用保険対象者の場合は、ハローワーク(公共職業安定所)に「雇用保険被保険者資格取得届」の届出が必要です。雇用保険対象者の要件は日本人と同様です。
届出期限は雇入れの翌月10日で、届出を怠ると、30万円以下の罰金対象となります。「特別永住者」と在留資格「外交」「公用」の場合は、届出の対象外です。
在留資格を持つ中長期在留者を受け入れている機関は、出入国在留管理局に中長期在留者の受け入れに関する届出を行います。届出期限は、事由が生じてから14日以内です。
外国人雇用状況届出書、または雇用保険被保険者資格取得届を提出している場合(労働施策総合推進法に基づく外国人雇用状況の届出が義務付けられている機関)は、手続きの対象外です。
外国人材も、日本人の場合と同様に健康保険・厚生年金保険(社会保険)の手続きを行う必要があります。
具体的には「被保険者資格取得届」を、雇用する事業所を管轄する年金事務所を通じて日本年金機構へ提出します。手続き期間は雇用してから5日以内です。
外国人の雇用後も、必要に応じて行わなければならない手続きがあるため注意が必要です。
在留期間更新許可申請は、外国人が現在の在留資格を変更することなく、在留期間を超えて引き続き在留する場合に必要な手続きで、出入国在留管理局に申請します。
6ヶ月以上の在留期間を有する外国人の場合は、在留期間満了日の3ヶ月前から申請可能です。ただし、入院や長期の出張など特別な事情が認められる場合は、3ヶ月以上前から申請を受け付けることもあります。
必要書類は在留資格ごとに異なり、新しい在留カードの交付時に、発行手数料は4,000円を収入印紙で納めます。手続きを忘れると、外国人本人だけでなく企業も責任を問われるため、注意してください。
在留期間満了時に在留期間更新許可申請がなされない場合には、雇用関係は終了となり、帰国のための諸手続きの相談・必要な援助を行います。
業務内容の変更や転職などを理由に、既に在留資格を取得して日本で活動している外国人が、出国することなく今までと異なる在留資格の活動内容にあてはまる業務に職種変更する場合や、「特定技能」の在留資格を持つ外国人が、「特定技能」のまま他の会社や分野に転職する場合は、出入国在留管理局に「在留資格変更許可申請」が必要です。
住居地を管轄する地方出入国在留管理官署に、変更予定の在留資格に応じた申請書・資料を提出します。(オンライン申請も可能)
たとえば、転職により在留資格を「特定技能」から「技術・人文知識・国際業務」に変更したい場合は、以下の「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の取得に必要な書類を用意します。
逆に「技術・人文知識・国際業務」から「特定技能」に変更したい場合は、「特定技能」の在留資格取得に必要な書類を用意する必要があります。
出入国管理および難民認定法第20条により、法務大臣が「在留資格の変更が適当と認めるに足る理由がある」と判断した場合のみ、在留資格を変更できます。
申請期間は、転職先での雇用契約締結など、在留資格の変更の事由が生じた時から在留期間満了日以前で許可され、新しい在留カードを受け取る際は、更新時と同様4,000円(収入印紙)が必要です。
尚、在留資格変更申請中は、許可が出るまでの間は今までの企業で働くことは可能ですが、新しい会社での業務に就くことは原則としてできませんので注意が必要です。
外国人が在留期間中に転職する場合は、就労資格証明書の交付申請を行うと便利です。就労資格証明書とは、外国人が現在の在留資格のまま、転職先で新たな業務に従事できるか否かを証明する文書です。
就労資格証明書のメリットは、外国人は自身のスキルを客観的に証明でき、転職先の会社は雇用しようとしている外国人がどのような就労活動が可能なのか事前に確認できる点です。
たとえば、在留資格「技術・人文・国際業務」は認められている業務の種類の幅が広いために、外国人本人と会社側の双方が行える業務の判断に迷う可能性が高いですが、あらかじめ転職先で従事する業務を文書で入管に説明したうえで、それをもとに入管から交付された就労資格証明書があればその必要がなくなります。
就労資格証明書の申請は、外国人の居住地を管轄する地方出入国在留管理官署に行います。交付を受ける際には1,200円(収入印紙)が必要です。
合併や事業譲渡などの理由で、所属機関である雇用企業の名称や所在地が変わる場合にも手続きが必要です。
特定技能、高度専門職、特定活動※ は、所属機関変更の際に在留資格変更申請も必要です。
※特定活動は指定書の内容によって変更申請が必要かどうかが異なる
在留カードの氏名、生年月日、性別、国籍、地域に誤りがあった場合や、生年月日以外の項目に変更が生じた場合は、誤りに気付いた日や変更が生じた日から14日以内に、出入国在留管理局に在留カード記載事項変更届を届け出ます。
住居を決めた日・移転した日から14日以内に、外国人本人が居住地の市区町村役所・役場に転入・転出届を行います。
事由が生じてから14日以内に、外国人本人(代理は不可)が出入国在留管理局に届け出ます。
在留資格「特定技能」とは、特定産業分野の即戦力として働ける一定の知識・スキルを持つ外国人の在留資格です。
特定技能人材の雇用までの流れは、ほかの在留資格と異なる部分が多いです。
「特定技能」1号で雇用するためには、外国人が以下の2つの試験に合格する必要があります。(試験は国内外で実施)
ただし、同分野の技能実習2号以降を良好に修了している場合など、一定の条件を満たした場合は、上記の試験合格の全部または一部が免除されます。
日本在住の外国人を特定技能で雇用する場合は、以下の順序で手続きを行います。
海外在住の外国人を特定技能で雇用する場合は、以下の順序で手続きを行います。
受け入れ機関である企業は、在留資格「特定技能」の外国人の雇用後4ヶ月以内に、各分野の協議会に入る必要があります。
※令和6年6月15日以降は事前の加入手続きが必須となりました。
さらに、四半期ごとに、出入国在留管理庁に特定技能外国人への支援業務の実施状況の報告書を提出、または出入国在留管理庁電子届出システムを通して届出を行わなければなりません。
外国人を雇用する際には、日本人にはない注意点があります。
外国人の賃金、労働時間などの労働条件を、日本人と区別することは禁止されています。
また、労働契約締結の際に、賃金や労働時間などの労働条件が書かれた書面を、外国人材が理解できる方法で示す必要があります。
永住者、定住者、日本人の配偶者、永住者の配偶者などを除く在留資格は、就労に制限がある点に注意してください。外国人材の職務を特定した上で、雇用を検討する必要があります。
たとえば、在留資格「技術・人文知識・国際業務」の外国人を雇用する際は、各専門分野の知識を必要とする業務で、大学・大学院などでの専攻科目と関連性がある業務でなければなりません。お弁当の箱詰め作業のような単純作業での雇用はできません。
また、留学生は資格外許可を得たらアルバイトが可能ですが、原則週28時間以内の条件を守らなければなりません。
外国人雇用の手続きの流れや注意点を解説しました。外国人を雇用する際には、在留カードによる就労資格の確認から始まり、さまざまな確認・手続きを行う必要があります。
どれも外国人材が日本で働き続けるのに必要な手続きなので、忘れずに行ってください。各種届出の承認には時間がかかるため、早めの申請がおすすめです。
また、外国人雇用の手続きの流れがわかっても、実際に自社で全ての手続きを行うのに不安がある方もいるかもしれません。
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