外国人が日本に滞在できる証明として取得する「在留資格」には、複数の種類が存在します。
外国人材を職場に受け入れる場合、就労できる在留資格の所持が必須条件として挙げられます。
本記事では、在留資格の種類を就労制限別に解説します。また、外国人材を就労させるための手続きや在留カードのチェックポイントも紹介します。
外国人材の受け入れに興味のある方は、ぜひ参考にしてください。
在留資格とは、外国人が日本に滞在できる資格をいいます。
法務省の出入国在留管理庁が審査・許可を管理しており、在留資格ごとに日本で従事できる活動などが定められています。
日本の事業者が外国人材を受け入れるにあたっては、就労できる在留資格が必要です。
密入国・オーバーステイなどで在留資格のない不法就労者を雇い入れた場合や、定められた活動の範囲外の業務に従事させた場合は、法律により罰せられます。
在留資格は、「ビザ(査証)」と同義語として扱われやすい言葉ですが、ビザは日本に入国するための推薦書であり、滞在の許可である在留資格とは性質が異なります。
外国人材の雇用の手続きを進めるにあたっては、在留資格とピザの違いを正しく把握しておく必要があるため、混同しないよう注意しましょう。
在留資格の種類は、就労の制限別にみると以下の3種類に分類されます。
それぞれの分類に含まれる在留資格一覧を詳しくみていきましょう。
以下の4種類の「身分による在留資格」を所持している外国人は、日本国内での就労活動に制限がないため、どの職種にも従事できます。
以下の5種類の在留資格は、原則として就労が許可されていません。
なお、「留学」「家族滞在」の在留資格は、地方出入国在留管理官署に資格外活動の申請を行い活動の許可を得れば、週28時間を超えない範囲での就労が可能になります。
「文化活動」の在留資格は、個別に就労可能時間が許可されます。
「留学」の在留資格は、夏休みなどの長期休暇中は週40時間まで就労が可能になります。
以下の在留資格は、定められた範囲での就労のみ許可されています。
転職などで活動の範囲が変わる場合は在留資格変更の手続きが必要です。
前項の「定められた範囲でのみ就労できる在留資格」に含まれる、「特定技能」と「技能実習」の制度を解説します。
特定技能は、人材不足が特に深刻な特定の分野で外国人材を受け入れるための在留資格です。
具体的には、「介護、ビルクリーニング、素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業、建設、造船・舶用工業、自動車整備、航空、宿泊、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業」が該当します。また、後述する「育成就労」制度の発足と併せて、特定技能の対象分野が拡大することも検討されています。
技能実習は、外国人が労働を通じて得た技術や知識を国に持ち帰り、活用するための制度です。主に途上国へ技術移転を行う国際貢献が目的とされています。
つまり、特定技能は人材確保、技能実習は技術移転と、それぞれ目的が異なります。
なお、技能実習は「育成就労」と呼ばれる制度に改正する方針を政府が発表しています。今後、転職の制限の緩和など、外国人材にとってより利用しやすくなる変更内容が盛り込まれる見込みです。
外国人材を職場に受け入れる場合、事例によって必要な手続きが異なります。
本章では、それぞれのケース別に手続きを解説します。
外国人材が、来日したばかりで日本での諸手続きに慣れていない場合も考えられます。事業者側は、必要に応じて適切なサポートを行える体制を整えておきましょう。
雇い入れたい外国人材がまだ来日していない場合、「在留資格認定証明書交付申請」の手続きが必要です。
この手続きは、外国人本人または申請取次の承認を受けた所属機関や登録支援機関などが管轄の地方出入国在留管理局に申請します。
申請内容に問題がなければ、在留資格認定証明書(COE)が発行されます。
取得した在留資格認定証明書をもって外国人本人が自国の日本大使館でビザ(査証)を申請し、ビザが取得できれば来日して就労が可能になります。
すでに日本に居住している外国人の活動の範囲が変わる場合や、留学生など就労が許可されていない外国人を新たに雇用する場合、在留資格の変更手続きを行います。
在留資格を変更するためには、管轄の地方出入国在留管理局に「在留資格変更許可申請」の手続きが必要です。
申請は、外国人本人または申請取次の承認を受けた所属機関や登録支援機関などが手続きできます。
在留資格を所持している外国人材を雇用する場合、従事する業務が定められた活動の範囲内であれば、前項で解説した「在留資格の変更の手続き」は必要ありません。
ただし、在留資格により「契約機関に関する届出」または「活動機関に関する届出」が必要です。
外国人本人が届出を行いますが、事業者による代理提出も可能です。
手続き方法は、最寄りの地方出入国在留管理官署への窓口持参、東京出入国在留管理局への郵送のほか、インターネットを通じたオンラインによる届出も認められています。
在留資格や在留期間、就労制限などは雇い入れ時に必ずチェックするべき項目です。
オーバーステイなどの不労滞在者と知らずに雇用した場合であっても、在留カードの確認不足など事業者に過失がある場合は処罰の対象です。
本章では在留カードをチェックする際のポイントを解説します。
まずは在留カードの券面の記載内容を確認しましょう。
「在留資格」や「就労制限の有無」の欄を確認し、就労制限のある在留資格は、必要に応じて変更手続きを行います。
就労制限が「指定書により指定された就労活動のみ可」の場合、次項で説明する「指定書」も確認してください。
「就労不可」の場合は原則就労が認められていませんが、カードの裏面に「資格外活動許可」の記載があれば、制限を超えない範囲での就労は可能です。
「許可:資格外活動許可書に記載された範囲内の活動」の場合、次項で説明する「資格外活動許可書」も確認が必要です。
在留期限が迫っていないかもチェックしましょう。在留期間の更新を申請中の場合は、裏面の「申請」欄に記載されます。
また、「住居地」の欄に変更があった場合も裏面に記載されます。履歴書などの情報と相違がないか確認しておきましょう。
在留資格や就労活動の内容は、在留カード以外に次の書類でも確認できます。
在留カードだけでは必要な情報を把握できない場合もあるため、状況に応じて確認を行ってください。
在留カードには複数の偽造対策が施されています。
カードを上下方向に傾けると、券面の「MOJ」と記載された箇所や左端が、ピンクからグリーンに色が変わり、左右に傾けた場合は、顔写真のホログラムの文字が動いて見えます。銀色のホログラム箇所は、角度を変えて見ると白黒が反転します。
また、暗い場所でカードの表面から強い光を当て、透かし文字が見えるかどうかでチェックも可能です。
ホログラムや光以外にも確認方法は存在します。出入国在留管理庁や出入国在留管理局が、偽造をチェックするツールを公開しています。
在留カードの情報を入力しカード番号が有効かどうか調べるウェブサイトや、在留カードを読み取って券面の記載情報と比較できるアプリが活用できます。
ただし、偽造の手法も変化していく可能性があり、上記で挙げたチェック方法が全てではありません。情報収集は積極的に、継続して行いましょう。
在留資格には複数の種類があり、それぞれ就労できる範囲が定められています。
外国人材の雇用には就労できる在留資格が必要です。就労できない在留資格のまま、または従事させる活動と定められた活動範囲が異なるまま、就労させることはできません。
外国人材を雇い入れる際は、在留期間や在留資格を在留カードなどでチェックします。
雇い入れのケースに応じて、在留資格の変更や届出などの手続きが必要です。
外国人本人が日本での手続きに不慣れな場合もあるため、事業者側に支援できる体制があると良いでしょう。
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