少子高齢化に伴う労働人口の減少により、多くの企業が深刻な人材不足の問題に直面しています。
年々深刻さを増す人材不足を解消するために、外国人材の活用を検討する企業も増えてきていていますが、採用時の懸念事項のひとつに「保険」があります。
日本人の雇用に関して、各種保険への加入が義務付けられていますが、外国人材の場合は一部例外があり、外国人材のみを対象とした制度もあります。
本記事では、外国人雇用と保険制度の関係性を解説します。
日本には国民の健康と公衆衛生や労働者の保護を目的にさまざまな公的保険が用意されており、国民の安定した日常生活の基盤として欠かせません。
日本国内で働く外国人材についても、原則的に、日本人と同様に公的保険の対象となります。
労働者が条件を満たした場合に国籍を問わず加入させる必要がある保険は、大きく「社会保険」と「労働保険」の2種類に分けられます。
社会保険とは、病気・けが・出産・老齢・障害・失業など生活の困難をもたらすいろいろな事故に遭遇した場合に一定の給付を行い、その生活の安定を図ることを目的とした強制加入の保険制度のことです。
その中でも、一定の条件を満たす労働者を雇用する事業主は「健康保険」および「厚生年金保険」に加入させなければなりません。また、一定の年齢以上の労働者に関しては、「介護保険」にも加入させる必要があります。
「労働保険」とは、「労働者の保護」を目的に施行されている公的保険で、「労災保険」と「雇用保険」の2つを総称したものです。
労災保険は、労働者が業務や通勤が原因で負傷した場合、また、病気になった場合や不幸にもお亡くなりになった 場合などに、労働者本人や遺族を保護するための給付を行う制度です。
雇用保険は、労働者の失業や育児・介護による休業、自ら教育訓練を受けた場合などに、生活や雇用の安定を促進するための給付を行う制度です。
健康保険・厚生年金保険の適用事業所に雇用され、一定の条件を満たす方は、国籍に関係なく社会保険への加入が必要です。
社会保険や労働保険の加入条件は以下のとおりです。
雇用保険への加入条件は以下の2点です。
ただし、外国人材の場合、上記の条件を満たす場合でも「昼間に学校に通っている学生」「在日外国人で、ワーキングホリデー制度による入国者及び留学生(昼間学生)」については加入の対象外です。
また、在留資格が「外交」「公用」の外国人も、対象とはなりません。
労災保険は、国籍に関わらず日本国内で労働に従事する方が対象です。
また、雇用形態も関係なく適用されるため、正社員だけでなく派遣契約やパート・アルバイト契約の外国人材も加入対象です。
社会保険には「健康保険」「厚生年金保険」「介護保険」の3つの保険制度がありますが、外国人に関しても日本人社員と同じ条件での加入義務が生じます。
健康保険・厚生年金保険は以下の条件にすべて該当する方が加入対象となります。
介護保険の加入対象は、65歳以上の方(第1号被保険者)と、40から64歳の方(第2号被保険者)の2つに分けられ、それぞれ加入条件は以下のとおりです。
また、厚生年金保険に関しては外国人材のみを対象とした制度が2つあります。
順に解説します。
「脱退一時金」は、外国籍の社員が国民年金や厚生年金の被保険者資格を喪失した状態で帰国した場合、日本国内の住所がなくなった日から2年以内に一時金を請求できる制度です。
一時的に日本で就労している外国人材の場合、掛け捨て状態となる年金への加入が負担となるため、支払った保険料を無駄にしないため、帰国後に一時金として返還する制度です。
脱退一時金と同様に、一時的な日本での就労を希望する外国人材の年金保険料支払いのリスクを軽減する制度に「社会保障協定」があります。
社会保障協定とは、日本での就労時に日本で支払った年金保険料が、母国での年金を支払ったこととして保障される制度です。
2024年1月時点で、社会保障協定を締結している国は以下の23ヶ国です。
外国人材を雇い入れる場合、雇用主に対して「外国人雇用状況の届出」をハローワークに提出する義務が課されています。
ただし、外国人材が雇用保険に加入する場合には、雇用保険の加入手続をもって代用することができます。
外国人材が雇用保険に加入する際の手続きは、日本人社員と同様に「雇用保険資格取得届」にて申請しますが、外国人材に関しては以下の7項目を記載が必要です。
なお、外国人雇用状況届出書の提出は離職時にも必要です。
外国人材に対しても、日本人社員と同様に各種公的保険が適用されますが、ワーキングホリデー等の例外もあります。
そのため、外国人材を雇い入れる場合には、社会保険や労働保険の加入義務があることを十分に理解し、一人ひとりに応じて必要な手続きに漏れがないよう注意しなければなりません。
外国人材の年金制度には、母国への帰国を希望している場合、年金が掛け捨てになってしまうリスクを保障するために、脱退一時金や社会保障協定などの制度が整備されています。
本記事では、外国人雇用における日本の公的保険制度について解説しましたが、具体的にどのような外国人材を採用すれば良いのか迷われているのではないでしょうか?
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