日本の外国人労働者は年々増加しています。実際、労働力不足の解消や若手人材の確保を目的に、「外国人を雇用したい」と考える企業は多いのではないでしょうか。
本記事では、なぜ日本で外国人労働者が増加しているのか、考えられる理由や増加の推移を紹介します。外国人雇用による企業のメリット、日本での外国人労働者受け入れの課題なども解説するので、外国人雇用を考えている場合はぜひ参考にしてください。
厚生労働省が発表した「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和5年10月末時点)によると、令和5年の外国人労働者数は2,048,675人と200万人を超えています。
前年と比べると225,950人増加、外国人雇用状況の届出が義務化された平成19年以降、過去最高を更新しています。
コロナ禍であった令和2年、3年は横ばい傾向ですが、近年再び増加傾向に転じています。
日本の外国人労働者が就いている業種は、多い順に以下のとおりです。
それぞれの業種で、外国人材が選ばれる理由を解説します。
製造業に就いている外国人労働者は552,399人で全体の27.0%とかなり多いです。業務内容によって異なりますが、主に「技能実習」「特定技能」「技術・人文知識・国際業務」などの在留資格を持っている外国人材が働いています。
製造業では、海外とのネットワークの構築を期待されて外国人材を雇うケースが多く見られます。海外との取引が多い製造業の会社では、多くの外国人材が自身の技術を活かして働いています。
サービス業に就いている外国人労働者は320,755人で、全体の15.7%です。サービス業は職種の幅が広く、専門的な職もあれば、初心者でも取り組みやすい職もあります。
サービス業の中では自動車整備業や、自身のスキルを活かせる外国公務などに就く外国人材が多い傾向にあります。
卸・小売業に就いている外国人労働者は263,555人で、全体の12.9%です。インバウンド需要の高まりもあり、外国人店員を積極的に雇用する企業が増えています。
同僚や顧客とのコミュニケーションで日本語を使ったやりとりが多いため、留学経験者が多く採用される傾向にあります。卸・小売業に就くためには、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格が必要です。
「技術・人文知識・国際業務」は、自然科学の分野(理科系の分野)若しくは人文科学の分野(文系の分野)の専門的技術若しくは専門知識を必要とする業務に従事するための在留資格であるため、単純労働系の仕事を行うことは認められていません。
日本の外国人労働者の国籍は、多い順に以下のとおりです。
人数としてはベトナムが最多で、在留資格で見てみると「専門的・技術的分野の在留資格」「技能実習」がともに多いことがわかります。
前年からの増加率で見てみると、以下の3カ国が増加傾向にあります。
特にインドネシアは、令和5年の労働者数が121,507人で、対前年増加率が56.0%と大幅に増加しています。特定技能制度を積極的な活用や、国内賃金が低めで日本で働く魅力を感じていることが大きな要因となっています。
日本の外国人労働者はなぜ増加しているのでしょうか。理由として、以下の内容が挙げられます。
それぞれの理由を詳しく解説します。
少子高齢化によって人材確保が難しいため、企業が積極的に外国人材を採用していることが理由として挙げられます。
留学生の受け入れも活発化しており、ほかにも政府が「高度外国人材」の受け入れを積極的に推進している点も理由として挙げられます。特に、需要が高く国内だけでは人材をまかないきれていないIT業界では、外国人材が活発に受け入れられています。
日本では、外国人の雇用、あるいは、外国人に限らず従業員に資する取り組みを行う場合に利用できる支援や助成金が豊富に用意されています。助成金には以下のようなものがあります。
また、外国人が日本で就労しやすくなるように、政府・自治体が外国人専門の相談員や通訳、外国人出張行政相談コーナーを設置するなどの就職支援施策により支援を行っております。
出身国ではなく、日本での労働を選ぶ外国人が増えています。理由としては以下のようなものが挙げられます。
国によっては経済状況が安定せず、職を探すのが難しい場合や、低賃金で生活ができない場合があります。母国で働くよりも日本で働いた方が給料が高いため、日本に来て働いている外国人材はたくさんいます。
しかし、日本の賃金は他国と比べて決して高いわけではないため、賃金の高さを理由に日本に働きに来る外国人材は減少傾向にあり、外国人材の獲得において他国との競争が激しくなっております。
OECD 平均賃金*2021年を基準年とする米ドルと購買力平価(PPP)
https://www.oecd.org/en/data/indicators/average-annual-wages.html?oecdcontrol-0c34c1bd70-var3=2023
一方、アニメや漫画文化、日本の歴史など、単純に日本が好きという思いから日本で働くことを選ぶ外国人も多いです。
外国人雇用による企業のメリットは、以下のような点が挙げられます。
それぞれのメリットを詳しく解説します。
日本の企業では、少子高齢化も一因として人手不足が深刻化しています。採用数の不足で悩む企業は、外国人材も選考に加えることで採用充足率が高まり、労働力不足の解消を図れる点がメリットです。
専門性の高い分野でも、外国人材を雇用すれば人材不足を解消でき、世界中の優秀な人材に出会うことが期待できます。
少子高齢化により若い人材の確保が難しい昨今、外国人材を雇用することで、見込みのある若い人材を採用できるというメリットがあります。
「特定技能2号」「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を持つ外国人材は無期限で長期的に働くことが可能です。企業としても、長期間優秀な人材を確保できる点は魅力的でしょう。
外国人材雇用は、海外進出を考えている企業にはプラスに働く可能性があります。特に、進出したい国出身の社員・スタッフがいることで、その国の状況や特色を把握しやすいでしょう。
母国語を話せる社員・スタッフなら、現地の人と円滑にコミュニケーションを取ることが可能です。
外国人材が増えている背景として、外国人材の新たな受け入れ制度「特定技能」の成立があります。特定技能制度とは、2018年に成立した改正出入国管理法によって、専門性や特定の技能を有する外国人を労働者として受け入れるために作られた制度です。
2019年4月から本格的な受け入れが開始されてから、労働力不足で悩んでいた企業は、積極的に外国人材を雇用できるようになりました。
続いて、特定技能を詳しく解説します。
特定技能制度では、「特定技能1号」と「特定技能2号」と、2種類の在留資格に分けられます。特定技能1号による受け入れ分野は2024年3月29日の閣議決定により4分野追加され、以下の16分野となりました。
特定技能2号による受け入れ分野は以下の2分野です。
特定技能1号は、在留期間が最長5年、家族の帯同は基本的に認められていません。
一方、特定技能2号は、3年、1年または6ヶ月ごとに在留期間を更新する決まりで、要件を満たせば配偶者や子どもなど家族の帯同が可能です。
また、日本語能力水準について、特定技能1号は試験で生活や業務に必要な日本語能力を身につけているか確認します。
特定技能制度と混同しやすいものに「技能実習制度」があります。名前が似ていますが、これらは全くの別物なので、間違えないように注意してください。
それぞれの特徴や制度の違いは以下のとおりです。
技能実習 | 特定技能 | |
---|---|---|
制度の目的 | 外国人材が母国に技術を持ち帰ることによる国際貢献 | 日本国内の特定の分野における労働力不足の解消 |
在留資格名 | 技能実習 | 特定技能 |
技能水準 | なし | 相当程度の技能水準と経験 |
在留期間 | 1号:1年以内 2号:2年以内 3号:2年以内(合計で最長5年) |
1号:通算5年 2号:通算上限なし |
業種・職種 | 90職種165作業 | 深刻な人手不足とされる12分野 |
人数制限 | 常勤の職員数による制限あり | 人数制限なし(建設、介護分野を除く) |
家族の帯同 | 不可 | 1号:不可 2号:配偶者と子どものみ可 |
技能実習制度との違いや、特定技能制度を詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
関連記事:特定技能とは? 知っておくべき制度の詳細や人事担当の役割まで解説
現在、技能実習制度では、悪質な仲介業者の存在や、技能実習生を低賃金で単純労働に従事させる行為が問題視されています。
政府はこうした技能実習生問題を解消するため、現行の技能実習制度の廃止を決め、それに替わる制度「育成就労」制度への移行を発表しました。
新制度は帰国が前提の技能実習制度と異なり、特定技能1号への育成を前提とした位置づけの在留資格となります。
また、技能実習制度では原則として本人都合による転籍は許可されていませんが、育成就労では制限が緩和され、下記条件を満たす場合に転籍可能になる見通しです。
日本での外国人雇用は増えていますが、その受け入れにはまだまだ以下のような課題があります。
それぞれの課題を詳しく解説します。
残念ながら、まだまだ「外国人材は日本人よりも安く雇える」という認識を持つ企業は多いです。しかし、労働基準法の最低賃金法や同一労働同一賃金は、外国人材にも日本人と同じように適用されます。
最低賃金を下回る給料や不当な待遇など違法な雇用を行うと、日本人雇用と同じく企業も罰せられます。また、在留カードを持たない不法滞在者の雇い入れも違法です。在留資格の確認を怠った場合も含め、もちろん雇用者は罰せられます。外国人材受け入れを進めるためには、外国人雇用に関する法を理解する企業の増加が求められます。
上述したような外国人雇用に関する法の無理解から、長時間労働や過酷な労働を強いられるなど、労働環境が整っていない問題もあります。外国人材を受け入れるためには、社内環境の整備が必要です。
対策として、職場での差別や格差をなくす取り組みや、やさしい日本語での表記、コミュニケーションの工夫が挙げられます。外国人材が快適に働けるよう、環境を整えましょう。
はじめて日本に来て働く外国人にとって、仕事だけでなく、日常生活を送ることも大変です。円滑にストレスなく生活が送るためのサポートが大切ですが、そこまでフォローが回っていない企業が多いのが現状です。
必要なサポートとして、住宅やライフラインの開通、口座の開設、免許の取得・更新などが挙げられます。慣れない環境でストレスを溜め込まないように、精神的なケアも必要です。
日本の外国人材は年々増加しています。理由としては、企業や政府の積極的な外国人材の受け入れや、支援制度などがあります。
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