外国人を採用する際には言語が異なることもあり、認識の違いでトラブルが起きるケースもあります。
トラブルを回避するためにも、雇用契約書を作成して文書で契約内容を共有することが重要です。
本記事では、外国人の雇用契約書を作成する時に記載すべき内容や、ポイント・注意点を解説します。要点を押さえた上で雇用契約書の作成を進めていきましょう。
従業員を新たに採用する際には、雇用契約書の作成が推奨されます。
給与、勤務時間などの契約内容は、口頭で伝えるだけでは漏れなく伝えることが難しく、また口約束では「言った」「言わない」のトラブルも起こりやすくなります。
契約内容は雇用契約書にして文書に起こすことで、雇用主と雇用される外国人との間で労働条件を「何となく」ではなく、明確に共有できます。
また、外国人本人が在留資格を申請する際には労働条件を理解している必要があり、その点でも雇用契約書は重要なものとなります。
在留資格によっては、母国語などの「外国人が十分に理解することができる言語」の併記が求められる場合もあります。
加えて、特定技能などの就労系の在留資格を取得する際には、基本的に、入管庁に雇用契約書の提出が求められます。そのため、就労系の在留資格で外国人を採用する際には、雇用契約書の作成が必要と考えた方が良いでしょう。
「労働条件通知書」は、労働者が自分の労働条件を書面で確認して、安心して働けるようにするためのものです。
労働契約の期間、労働時間、賃金、退職に関する事項などを、労働者に明示することが労働基準法で義務付けられています。
雇用契約書と労働条件通知書の違いとしては、労働条件通知書は雇用側から一方的に通知されるのに対し、雇用契約書は双方の合意のもとで取り交わされ、合意がなされたことを証明する書類として機能します。
また、労働条件通知書による労働条件の通知は法律上の義務となりますが、雇用契約書は義務ではなく、雇用主が任意で作成するものとなります。
雇用契約書は、実務上は労働条件通知書を兼ねる「雇用契約書 兼 労働条件通知書」などとして作成されることも多いです。
この場合、「雇用契約書 兼 労働条件通知書」には、労働条件通知書の「絶対的明示事項」を記載する必要があります。絶対的明示事項としては、以下が挙げられます。
一方で、会社で独自に定めているもの(退職手当、賞与などの臨時の賃金、安全衛生など)があれば、相対的必要記載事項として記載することになります。
外国人の雇用契約書を作成する場合は、労働条件通知書と兼用するかに関わらず、業務内容、労働時間や休日、給与、在留資格の扱いなどは記載すべき項目となります。それぞれの項目について、以下でポイントを見ていきましょう。
業務内容は在留資格の範囲内でのみ認められます。雇用契約書に記載されている業務内容が在留資格の範囲外ではないか、記載が不明瞭ではないか確認しておきましょう。
なお、在留資格や在留期間は、在留カードの表面で確認できます。また、資格外活動許可を得て就労する外国人が許可されている活動内容は「資格外活動許可書」で確認が可能です。雇用契約を結ぶ際には、在留資格や資格外活動許可の範囲を事前に確認しておきましょう。
労働基準法に反した労働契約ではないか、あらためて確認しておきましょう。
外国人労働者も日本人労働者と同様に、労働基準法による労働時間の制限があります。原則として1日に8時間、1週間に40時間を超えて労働させることはできません。
また、休日についても労働基準法に規定があり、「毎週少なくとも1日」または「4週間で4日以上」の休日を労働者に与えることが義務付けられています。
労働時間の制限については、事業内容等によって、適用が除外されていたり、例外の適用があったりする場合があります。不明点については所轄の労働局などに問い合わせするのが良いでしょう。
雇用契約の給与は、日本人と同等以上に設定しましょう。特定技能などの在留資格では、雇用契約で外国人の賃金は日本人と同等以上にすることが求められます。
また、外国人労働者にも最低賃金が適用されるため、その金額にも注意して賃金を決める必要があります。
最低賃金は、都道府県ごとに設定される「地域別最低賃金」と、特定の産業ごとに設定される「特定最低賃金」の2種類あり、「地域別最低賃金」は、2024年10月以降は全国平均で1,055円(時間額)となっています。
賃金をより高い水準に設定することで、雇用される外国人のモチベーションにもつながります。日本人と同等以上、最低賃金以上という最低限の基準を守った上で、外国人自身のやる気や働きがいも考慮して適切な賃金設定を心がけましょう。
外国人との雇用契約書で特有の記載項目のひとつとして、在留資格の項目があります。雇用予定の外国人が在留資格を取得できなかった場合も考慮して、「在留資格を取得した場合に契約書の効力が発生する」ことを明記する必要があります。
また、雇用契約書に契約内容として盛り込むだけでなく、外国人本人にも、在留資格が取得できなかった時は雇用できないことを口頭でもきちんと伝えておきましょう。
なお、自社で外国人が行う仕事内容で就業可能な在留資格がないまま働かせてしまうと、雇用側も不法就労助長罪に問われることになります。雇用を開始する前に、外国人が持っている在留資格と、その在留資格で就業可能な範囲をしっかりと確認しましょう。
雇用契約書を作成して外国人に交付する際には、外国人本人が雇用契約の内容を十分に理解できるように配慮することが大切です。外国人の雇用契約書を作成する時の注意点を以下で紹介します。
外国人の母国語に翻訳した雇用契約書も作成し、雇用契約の内容について十分に理解してもらうように努めましょう。原本と訳文の内容に齟齬が生じた場合に備え、正文は日本語とすると良いでしょう。
雇用契約書は、契約内容を明確にして双方の合意を得ることが目的です。労働者本人に雇用契約や労働条件を理解してもらうことが大前提となります。
また、日本語でも翻訳でも専門用語や難解な表現は避け、誰にでも理解できる内容にすることで、外国人も雇用側も理解しやすくなります。
外国人本人の文化を考慮して、各種の労働条件を理解してもらえるよう説明に努めることも大切です。雇用契約書で形式的に契約を結ぶだけでなく、口頭説明も含めて相手の立場に立って丁寧に労働条件を伝えましょう。
宗教的な文化や、国ごとの価値観の違いなども事前に把握をしてコミュニケーションが取れると、より理解してもらいやすくなります。
外国人を採用する際は雇用契約書を作成することで、契約内容への認識の相違が原因でのトラブルを回避でき、在留資格の取得に向けた労働条件の理解にもつながります。
雇用契約書には、業務内容、労働時間、休日、給与、在留資格が得られなかった時の扱いなどについて明記することが推奨されます。
契約内容や労働条件の理解は、外国人本人が安心して仕事をはじめるためにも重要です。外国人を雇用する際には、雇用契約書の作成も忘れずに行いましょう。
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