在留カードとは、日本に中長期滞在する外国人(3ヶ月を超える在留期間が決定された人)に対して交付されるカードです。在留カードには、外国人の在留資格や在留期限、就労制限の有無などが記載されています。
外国人を不法就労させると事業主も処罰の対象になるため、外国人労働者を雇用する際には必ず在留カードを確認しましょう。
本記事では、在留カードの基本知識や外国人を採用する際に確認すべき項目などを解説します。外国人を採用したいけれど採用前の確認事項がわからない方は、ぜひ参考にしてください。
在留資格とは、出入国管理及び難民認定法(以下、入管法)上の法的な資格をさします。外国人が日本に在留する期間、一定の身分や地位を有する者としての活動を行えること、一定の活動ができることを証明できる資格です。
在留資格には、以下の29種類があります。
就労が認められる在留資格(活動制限あり)
在留資格 | 該当例 |
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外交 | 外国政府の大使、公使等及びその家族 |
公用 | 外国政府等の公務に従事する者及びその家族 |
教授 | 大学教授等 |
芸術 | 作曲家、画家、作家等 |
宗教 | 外国の宗教団体から派遣される宣教師等 |
報道 | 外国の報道機関の記者、カメラマン等 |
高度専門職 | ポイント制による高度人材企業等の経営者、管理者等 |
経営・管理 | 企業等の経営者、管理者等弁護士、公認会計士等 |
法律・会計業務 | 弁護士、公認会計士等 |
医療 | 医師、歯科医師、看護師等政府関係機関や企業等の研究者等 |
研究 | 政府関係機関や企業等の研究者等 |
教育 | 高等学校、中学校等の語学教師等 |
技術・人文知識・国際業務 | 機械工学等の技術者等、通訳、デザイナー、語学講師等 |
企業内転筋 | 外国の事務所からの転勤者介護福祉士 |
介護(※1) | 介護福祉士 |
興行 | 俳優、歌手、プロスポーツ選手等 |
技能 | 外国料理の調理師、スポーツ指導者等技能実習生 |
特定技能 | 特定産業分野の各業務従事者 |
技能実習 | 技能実習生 |
身分・地位に基づく在留資格(活動制限なし)
在留資格 | 該当例 |
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永住者 | 永住許可を受けた者 |
日本人の配偶者等 | 日本人の配偶者・実子・特別養子 |
永住者の配偶者等 | 永住者、特別永住者の配偶者、我が国で出生し引き続き在留している実子 |
定住者 | 日系3世、外国人配偶者の連れ後等 |
就労の可否は指定される活動によるもの
在留資格 | 該当例 |
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特定活動 | 外交官等の家事使用人、ワーキングホリデー等 |
就労が認められない在留資格(※2)
在留資格 | 該当例 |
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文化活動 | 日本文化の研究者等 |
短期滞在 | 観光客、会議参加者等 |
留学 | 大学、専門学校、日本語学校等の学生 |
研修 | 研修生 |
家族滞在 | 就学資格等で在留する外国人の配偶者、子 |
※1:平成29年9月1日施行
※2:資格外活動許可を受けた場合は、一定の範囲内で就労が認められる
引用元:在留資格一覧表|法務省
在留資格と査証(ビザ)が同じ資格だと思っている人もいますが、全く別のものです。
ビザは、外国人が日本への入国許可を求める書類で、在外日本大使館で申請し、外務省が発給します。日本への入国を認めても問題がないと推薦された証明であることから、上陸審査が終わったら役割を終えます。
在留資格は、外国人の「在留資格」と「日本で行える活動内容」を定めたもので、法務省(出入国在留管理庁)が上陸審査・許可の際に付与する資格です。こちらについても「ビザ」と呼ばれることがあるため混乱しがちですが、正式には「在留資格」と呼ばれます。
在留カードは、中長期在留者(3ヶ月を超える在留期間が決定された人)に対し、新規の上陸許可や在留資格の変更許可、在留期間の更新許可などの在留資格に関する許可に伴って交付されるカードです。
出入国在留管理庁が、日本に中長期間滞在できる在留資格・在留期間を証明する「証明書」として交付します。上陸許可以外の目的で発行される場合は、従来の旅券による各種許可の認印に代わる「許可証」としての役割を果たす点に注意しましょう。
在留カードには、氏名、生年月日、性別、国籍・地域、住居地、在留資格、在留期間、就労の可否などの重要事項が記載されており、16歳以上の場合は顔写真も表示されます。
在留カードを持っていない外国人は原則就労できません。そのため、在留カードの確認を忘れずに行う必要があります。特別永住者については在留カードではなく「特別永住者証明書」が発行されているため、そちらを確認してください。在留カードは常時携帯義務がありますが、特別永住者証明書には常時携帯義務はありません。
不法就労となるのは以下の3つの場合です。
不法滞在者は入管法第70条の規定により、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、またはその両方が科されます。退去強制(いわゆる強制送還)されるケースも多いため、注意が必要です。
外国人を不法就労させたり、不法就労を斡旋したりすると、事業主も処罰の対象になる点に注意してください。入管法第73条の2の規定により「不法就労助長罪」の罪に問われ、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、またはその両方が科されます。
雇用の際に不法就労者であることに気付かなかった場合でも、在留カードを確認しなかったなどの過失がある場合は処罰の対象となるため、外国人の雇用前に必ず在留カードを確認しましょう。
また、外国人の雇用時や退職時にハローワークへの届出をしなかったり、虚偽の届出をしたりすると、30万円以下の罰金に処されます。
在留カードには、氏名、生年月日、性別、国籍・地域、住居地、在留資格、在留期間、就労の可否など重要事項の最新情報が記載されています。
外国人雇用の際に確認すべき、以下の6つの在留カードの項目を詳しく解説します。
まず、雇用しようとしている外国人の顔が在留カードの顔写真と一致しているか確認しましょう。在留カードの有効期限の満了日が16歳の誕生日になっている場合は、写真は表示されない点に注意してください。
次に、氏名や生年月日・性別・国籍・住居地を確認しましょう。住居地に変更があった場合は裏面に記載されるため、裏面も確認してください。
外国人を雇用する際には、在留カードの表面の「就労制限の有無」を確認してください。外国人の就労制限には「就労不可」、「一部就労制限」、「就労制限なし」の3種類があります。
就労不可 | 原則就労できない |
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一部就労制限 | 以下のいずれかの記載があるため、必ず確認する ①「在留資格に基づく就労活動のみ可」 ②「指定書により指定された就労活動のみ可」(在留資格「特定活動」) |
就労制限なし | 就労内容に制限はない |
一部就労制限の②「「指定書により指定された就労活動のみ可」(在留資格「特定活動」)」は、個々に就労の可否が異なるため、法務大臣が指定した活動が記載された指定書を確認してください。
在留資格が「特定活動」の外国人には、指定された活動内容が記載された指定書が交付(またはパスポートに添付)されており、指定書を確認することで就労できるか否かを確かめることが可能です。
そもそも在留資格のない外国人には、在留カードは発行されませんが、就労できる在留資格とできない在留資格がある点に注意してください。
在留資格に定められた範囲で就労できる在留資格は、特定活動を除いて19種類です。
永住者・日本人の配偶者等・永住者の配偶者等・定住者は、就労制限がないため、「就労制限なし」と記載されています。どんな業種・職種でも、フルタイム・パートタイムのどちらでも雇用が可能です。
文化活動・短期滞在・留学・研修・家族滞在は、原則として就労不可ですが、「資格外活動許可」を持つ場合、同許可の範囲内で就労が可能です。ただし、就労時間や就労場所に制限がある点に注意してください。
資格外活動の有無や許可の期限、許可されている活動の内容は、在留カード裏面の「資格外 活動許可欄」や「資格外活動許可書」、または旅券(パスポート)上の資格である資格外活動許可証印などで確認できます。
「資格外活動許可欄」に次の①、②のいずれかの記述がある場合は、就労が可能です。
①「許可(原則週28時間以内・風俗営業等の従事を除く)」 | 風俗営業等の従事を除く原則28時間以内のアルバイトでの就労が可能 |
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②「許可(資格外活動許可書に記載された範囲内の活動)」 | 資格外活動許可書の確認が必要 |
永住者・高度専門職2号以外の在留資格の場合、在留期間(満了日)が記載されています。この満了日を過ぎて日本に滞在すると、オーバーステイ(不法滞在)となります。
永住者・高度専門職2号の場合、在留期間(満了日)はありませんが、在留カードには有効期限があります。有効期限が切れてもオーバーステイにはなりませんが、罰則の対象となります。
以下の3つの場合は、在留カードがなくても就労が可能な場合があります。
上記3つのケースに該当するかどうか、旅券などで必ず確認しましょう。
特に「留学」「研修」「家族滞在」「文化活動」「短期滞在」の在留資格で在留している場合、「資格外活動許可」を受けていない限り就労できない点に注意が必要です。在留カードがない外国人が資格外活動許可を受けている場合、パスポートにステッカーが貼られていますので確認しましょう。
外国人雇用の際に確認すべき「在留カードの6つの項目」を確認しても、そもそも在留カードが偽物の可能性もあるため、注意が必要です。
在留カードには、偽造防止のためのICチップが入っているほか、券面にホログラムや光学的変化インキなどの偽変造防止対策が施されています。以下で、在留カードが本物であるかどうか確認できる4つのポイントを解説します。
本物の場合、在留カードを上下方向に傾けた際に、「MOJ」の文字の周囲の絵柄が緑色からピンク色に変化します。変化しない場合は偽物です。
本物の場合、90度見る角度を変えた際に、銀色のホログラムの文字の白黒が反転します。変化しない場合は偽物です。
本物の場合、カードを上下方向に傾けた際に、左端が緑色からピンク色に変化します。変化しない場合は偽物です。
本物の場合、暗い場所でカードおもて面側から強い光を当てた際に、「MOJMOJ」の文字が見えます。見えない場合は偽物です。
出入国管理庁では上記のような在留カードの偽物対策を行っていますが、在留カードの偽変造技術の精巧化により、より精度の高い偽変造在留カード対策が必要です。
在留カードが本物なのか見分ける方法として、在留カード読み取りアプリケーションを利用する方法があります。在留カード等のICチップに記録された氏名・住所・顔写真等の情報を読み取り、券面の情報と比較すれば、在留カード等が偽造されたものでないことの確認が可能です。無料で利用できるアプリのため、あらかじめスマホにダウンロードすることをおすすめします。
在留カード等番号失効情報照会を利用する方法もおすすめです。外国人から提示された在留カードの番号、在留カード等有効期間を入力すると、失効しているかの判定が出ます。実在する在留カード等の番号を悪用した偽変造在留カードも存在するため、問い合わせ結果にかかわらず、上記の偽変造在留カード対策もあわせて行ってください。
仮放免許可書とは、不法滞在や不法入国等により入国管理局に収容されている人が、健康上の理由等で一時的に収用を解かれている場合に発行されるものです。仮放免許可は在留資格ではない点に注意しましょう。
仮放免許可書の裏面に「職業又は報酬を受け取る活動を禁止」と書かれていた場合は就労不可です。仮放免許可証に上記の記載がない場合でも、在留カードで「就労可能」であることを確認できなければ就労できません。
在留カードとは、在留外国人の在留資格を確認できるカードです。在留外国人を雇用する際には、在留カードの確認が重要になります。
「就労不可」の外国人もいるため、必ず確認しましょう。「一部就労制限」の場合は、認められている範囲内の業務か確認が必要です。
とはいえ、本記事を読んでも在留カードが本物かどうか、本当に採用して大丈夫なのか不安な方もいるかもしれません。その際は、外国人材採用のプロフェッショナルに相談するのが良いでしょう。
Adeccoの特定技能外国人材紹介では、特定技能に特化した外国人材の紹介を行っております。厳格な基準をクリアした意欲的な人材のみ採用しているため、在留外国人の雇用や定着などでお悩みの方は、ぜひAdeccoにご相談ください。